子供が私立一貫中高合格 「年収800万円ないと苦しい」

 いよいよ中学受験のシーズン到来。中高年にとっては、子どもや孫が受験本番なのはもちろん、受験に備えた学習塾への入塾時期でもある。だが、中学受験さえ合格すれば“楽園”という、学習塾と私立中高一貫校が築き上げてきたイメージは、いまや崩壊しつつある。実子の受験勉強体験から取材を始め、『中学受験』(岩波新書)を上梓したジャーナリスト・横田増生氏が、中学受験ビジネスの実態に迫る。(文中敬称略)

  首都圏に住む中村章子=仮名(53)が、現在大学生になる娘の異変に気がついたのは、“女子の御三家”である桜蔭中学の3年生になったときだった。毎週通っているはずだった塾から届いた成績表に欠席している日があるのを見つけた。

「どうして塾を休んでいるのって聞くと、塾の宿題が間に合わなかったから行けなかった、って娘が泣きながらいうんです」

 例年60人前後を東大に送り込み、東大合格者ランキングでトップ10の常連である桜蔭中学に娘が合格した時、学校の授業だけで大学合格まで十分だろうと思っていた。その中村が娘を塾にやろうと思ったのは、合格発表の日に手にしたパンフレットがきっかけだった。「合格おめでとう。次は東大!!」と書いてあった。有名私立中高一貫校の生徒を優先的に受け入れることで有名な塾〈鉄緑会〉である。中村は娘を鉄緑会に通わせることにした。

 しかし、勉強量が許容量を上回ったため、中村の娘は学校でも塾でも落ちこぼれることになる。結局、一年浪人して志望校の国立大学に合格するが、それまでにかかった学校の授業料に塾代、家庭教師代などを合計すると大学合格までで1000万円を超えており、当初の予定の2倍以上かかっていたことを知って中村は愕然とした。

 娘の通学が少しでも楽になるようにと、学校の近くに建売住宅を購入したローンも残っていたので、「決して楽な金額ではありませんでした」と中村は語る。

 学習塾と私立中高一貫校には、いったいいくらかかるのだろう。私立中高一貫校を受験するための学習塾は小学3年2月から3年間通うのが“標準”とされ、3年で200万円前後かかる。私立中高一貫校の授業料は500万円超で、合計すると約700万円となる。ファイナンシャル・プランナーの畠中雅子は、子どもを私立中高一貫校に通わせながら、家計を維持していくことへの注意を促す。

「私立中高一貫校の学費のために親は老後資金を切り詰めることにもなりかねません。その結果、現役で働いているときには、そこそこの船に乗っているつもりでも、老後になると自分たちの船が“難破船”になっていた、ということにもなりかねません」

 畠中によると、一人の子どもを私立中高一貫校に通わせるには年収で800万円以上ないと苦しく、二人となると1000万円以上ないと厳しい、という。

※週刊ポスト2014年1月31日号