学生時代の恩師である江上波夫先生が十一月十一日にご逝去された。享年九十六。

戦後、騎馬民族説で日本の歴史に大きな衝撃を与えた先生の興味は東アジアにとどまりませんでした。先生は、一九五六年にイラク・イラン調査団を組織し、日本のオリエント学の基礎を築いた先駆者。日本オリエント学会にも参加し、さらに池袋に古代オリエント博物館を開館させたのは七十一歳の時。岡山市立オリエント美術館蔵品や天理参考館のコレクションの収集にも関与し、名古屋の野外民族博物館リトルワールドの館長も務められました。 江上先生は広い視野と尽きない好奇心を持ち、時空を越えて人や人の遺した物に対して探究心を燃やし続けました。ある人によれば先生自身が騎馬民族だそうです。まさに、ユーラシア大陸を駆け抜け、広い世界に我々の目を開かせたのです。 今頃はきっとあの世で、過去の日本人にどこからやって来たのかを聞き、さまざまな古代の王たちとさぞ楽しく語り合っておられることでしょう。

今は唯だ、「夢あるところに希望あり」という最晩年の言葉を念じつつ、先生のご冥福を祈るのみ。