春も盛りに、野山も街も色とりどりの花の香りに包まれています。今月は花にまつわる中国のお話をいたしましょう。
その昔、地方のある国を王様が治めていました。しかし、たいそう年をとってきた王様には、最近こんな心配事があったのです。
「わしにはもう死が近いようだ。息子たちは目先の欲ぱかり争っておる。わしが死んだあと、この国をいったい誰に治めさせれば良いのやら」
ある日、王様は臣下を呼び寄せて相談なさいました。この臣下はかしこまって、王様に名案をそっと耳打ちいたしました。
さっそく国じゅうの村々に王様からのおふれが告げられました。
《将来の国王としてふさわしい子供を求め、選び用したい》
その方法は、国じゅうの子供たちにそれぞれ一粒ずつの花の種を持たせ、この種から最も美しい花を咲かせたのは誰か、王様が見比べて将来の国王に決める、というものです。
ある村の宋金という男の子も花の種を一粒いただいて帰り、植木鉢に蒔いて毎日水をやっては、やがて芽が出て茎も伸び、とてもきれいな花が開く日を心待ちにしていました。けれど一日一日と日が経っても植木鉢には何も生えてくる気配がありません。他の植木鉢に取り換えてみました。土を換えてもみました。またたく間にニカ月が過ぎ、とうとう王様の前で花を競い合う日となったのに、宋金の植木鉢はまだ空っぽのままでした。

さあ、この日、国じゅうのあちこちから子供たちが一斉にお城へやって来ました。みなそれぞれに花を抱え、赤いのや黄色の花、白い花などみな美しく、誰の花が最も美しいとは一口に言えないほどです。
いよいよ王様がお出ましになり、子供たちの前に歩み出られました。王様は大広間に居並ぶ子供たちがそれぞれ手にしている、何とも美しい花を一つ一つご覧になり、一人一人に声をかけました。子供たちは口々に、花の美しさや、育てた苦労話を王様に串し上げたのです。
しかし、ある男の子の前に進まれた時、王様の足が止まり、険しい顔に変わのました。この男の子を見ると、空っぽの鉢を抱え、困った様子で頭を低く垂れたままです。
「お前はどうして空の鉢を持って来たのじゃ。何ゆえに花を咲かせることが出きなかったのじゃ」
そう、この男の子が宋金でした。宋金は泣きながら「王様、毎日心をこめて水をやり、育てようと努めましたが、芽も出ず、仕方なく空の鉢を持ってまいったのです」と答えました。
宋金がこう申し上けるのを聞いて、王様は、うれしそうに笑い出し、言いました。
「見つけたぞ。国王となるにふさわしい正直な子棋を、とうとう探しあてたぞ!」
なぜでしょう。実は臣下が王様に耳打ちした知恵で、子供たちに与えられた種は全て鍋で煮られたもの。花が咲かない筈なのでした。