出身大学は人生にどれほど影響するか | 練馬の学習塾

プレジデント 1月20日(月)

 出身大学はその後の人生にどれだけ影響するのか?  これを明らかにするために、プレジデント誌では1970年代~2010年代の各年代に就職した関東、関西の働く男女計1000人にアンケート調査を実施した。

  まず、就職活動。かなり影響すると答えた人が59.7%、多少影響するが35.0%と、出身大学が就職活動に影響するとの回答が実に95%近くに達した。企業の採用時の「学歴不問」は、言葉通りに受け取らないほうが賢明かもしれない。

  一方で転職活動となると、かなり影響するは29.5%と大幅に減少、多少影響するが46.5%と高いものの、就職時に比べれば転職は出身大学の影響が減少するようだ。

  年収、昇進においても、出身大学が影響するという回答が6割を占める。完全な実力主義の会社もあるだろうが、伝統企業においてはやはり学閥は健在で、入社時のみならず出世においても、出身大学名が重視される傾向はまだ根強いといえそうだ。

  さらに出身大学の影響は、結婚や恋愛にまで及んでいる。結婚において出身大学が影響するという回答は7割近くに達し、恋愛でも半数だった。恋愛はともかくいざ結婚となると、出身大学、その先の就職先企業のブランドや年収、出世といったものが、直接大きく影響していることがわかる。

  出身大学の名前だけではなく、大学での多彩な出会いや人脈形成、就職活動における卒業生の支援など、大学の持つリソースの差が、こうして人生にも影響していくと考えられる。

  出身大学が私生活における満足度や幸せ度に影響すると回答した人が、43.0%にとどまる一方で、仕事生活では影響するという声が大きくなった。結果的に、人生全体の満足度、幸せ度においても、出身大学が影響するという答えが半数を占める。『大人養成講座』(1993年)などの著作があり、バブル世代の若者文化に詳しいコラムニストの石原壮一郎氏(63年生まれ、埼玉大卒)は、「出身大学の印象は、どうしても一生ついてまわる。だが、自分が成功しないことを、出身大学のせいにするのは不幸の始まりだ。成功した人は、自分の出身大学など、気にしていない」と語る。

  出身大学とその後のステータスには相関関係があり、出身大学が幸せ度にも影響していることは事実だが、卒業してしまった以上、出身大学のことなど気にしていても仕方がない。転職になるとそれほど大学名は関係ないというアンケート結果も出ている。

  「学歴にこだわる人って、社会的に恵まれていない人なんじゃないかと思いますね。高学歴の人は『オレは○○大学出なのに』、低学歴の人は『自分はしょせん××大学だから』と、学歴を引きずっている。でも、社会に出てしまえば実力勝負で、大差はないですよ。大学名よりも個人の能力差です。仕事の満足度や幸せ度を学歴のせいにするのは、責任転嫁だと思いますね」(石原氏)

 「出身校コンプレックス」の解消には、40代のバブル世代の生き方にヒントがあると石原氏は言う。

  「今の40代は、就職難の若者には気楽に見えるだろうが、わりとたくましく、バブルもリーマンショックも乗り越えてきた。若いうちは、それほどお金もないのにクルマを買い、スキーやデートにお金を使い、『今』を精一杯楽しんだ。20代の若いうちに堅実になりすぎず、今を楽しむ体験をしたほうが、年をとっても幸せ度が高いのではないか。若いころから堅実に生きることで、使い物にならない40代になってはいけない」

  就職や恋愛の失敗を大学のせいにせず、何事も楽しむこと。経験を積み、大人の世界に場馴れをすること。それが、学歴に縛られた世界から大人の実力社会への脱皮なのだ。 .

  今回のアンケートでは、年代ごとに周りから見て「就職時に勢いがあって幸せそうな人」と、「今も幸せそうな人」の出身校についても聞いた。

  70年代入社組は、男性は早稲田、慶應、京大、東大などが上位を占め、日本、近畿、同志社などの大規模な伝統校が並ぶ。入社時よりも入社後40年を経た「今の幸せ度」のほうが高い中央、立命館、上智などは、入社後に伸びる大学といえる。

  女性は女子大が強いが、入社時と今で顔ぶれが入れ替わっているのが興味深い。つまり就職時の元気度と現在の幸せ度が結びついていないのだ。

  80年代入社組では、男性は引き続き手堅い伝統校が上位を固める。そこに亜細亜がランクインしているのが時代を感じさせる。女子は70年代同様、入社時と今で入れ替わりが激しい。

  90年代には明治が入社時の幸せ度で初めてベスト10入りし、女性は青山学院、上智、立教など、女性イメージの強い共学大学が就職時のランクが高くなっている。しかしそれが、今の幸せには繋がっていない点が注目される。やはり名門女子大にくらべ、社会的地位の高い卒業生がまだ少ないためであろう。

   この傾向は00年代も続くが、女性が幸せそうな大学に法政、明治など質実剛健系だった大学が食い込んでいる。学部新設やキャンパス再開発などの大学改革でこれらの大学が女子受け路線を成功させたことで、社会からも評価されるようになったのだ。

  10年代には立命館大学が男女とも大躍進し、女子大はランキングからほぼ消え去った。今後、女子大の幸せ度がどのように巻き返してくるのかが注目だ。

  就職時と今で、評価に大きな違いがある大学があることは興味深い。教育熱心な大学の卒業生のほうが、社会的に見て幸福そうであるという、驚くべき結果も出た。将来の子女の進学先を考えるときには、こうした大学の最新の動向にも気を配りたい。

コメントを残す